Japanese Association of Family Therapy
一般社団法人 日本家族療法学会

認知症を介護するご家族へ

米国では介護施設で新型コロナウイルスの感染が広がり、死者数の二割を施設の入居者やスタッフが占めるとの報告もあります。日本でも施設内感染が相次ぎ、デイケアやショートステイなどの介護サービスが次々と中止されています。介護者にとっては、限られた休息の時間が失われることになり、認知症の家族と過ごす時間がこれまで以上に増え、ストレスが高まります。介護家族支援の米国第一人者であるバリー・ジェイコブスは、新型コロナのまん延でこれまでの生活が崩れることがストレスにつながるとして、現状に適応した、新しい生活のスタイルを探すことを奨励しています。
(Caregivers and Coronavirus: Dealing with Forced Isolation:https://www.aarp.org/caregiving/home-care/info-2020/caregiving-isolation-quarantine.html?intcmp=AE-CAR-CLB-R2-C1

まずはイライラしている自分に気付き、少しでも感情を収めることが大切です。認知症の家族とずっと同じ空間にいるのではなく、二十分だけ離れてみるだけでも、気持ちは楽になるとバリーは言います。同じ部屋にいたとしても、ヘッドフォンでリラックスできる音楽を聴くなど、介護から離れる時間を作りましょう。

在宅勤務や休校で、普段はあまり家にいない家族が認知症の人と過ごす時間が増えると、摩擦も大きくなります。でも、見方を変えれば、家族が一つにまとまるチャンスにもなります。母や父がまだ元気だったころ、一緒に楽しんだ古い映画や音楽を楽しむと良いでしょう。家族のアルバムを取り出して、みんなで見直す時間もあります。孫が認知症の祖父母のそばで手をつないであげるだけでも、家庭の雰囲気は和らぎます。テレビ電話や会員制交流サイト(SNS)など、さまざまなコミュニケーションの手段が普及しています。今回の事態を機会に、遠方の親類とも一日に一回は連絡を取りましょう。
(4月29日付け東京新聞・中日新聞への掲載内容に加筆)

渡辺 俊之

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